里が自分を知っていて助かった。



こういうとき、自分の名声はとても役立つ。



“ニンキモノの芦多クン”



芦多は頭に浮かんだ千歳を掻き消した。



「こんなところで何を?」


「里に会いに。」



耳元で囁く。



「それは、何だ?」


「これですか?」



なんでもありません、と里は紙包みを隠した。



「何が入っている?」



里の手を取り、ゆっくりと開かせた。



「これは…。」



気まずそうに里は顔を歪めた。



…やりかくなかったが、仕方ない。



「里…。」



顔を上げた里に、芦多は目を瞑って口付けた。