あの時。



言葉に出来ないあの気持ち。



灯世は経験したことがないはずだ。



暗闇から一筋の光が差した、とでも言おうか。



我ながら臭い表現だ。



あの微笑みは今でもはっきり覚えている。



そして…。



立ち止まった芦多を灯世が不思議そうに見上げた。



「芦多様?」



今、あの時よりおとなびはしたが変わらない温かい笑顔が目の前にある。



誰よりも、愛しい女性(ヒト)。