「だから、変なことは考えるな。」



芦多の言葉に、灯世が顔を上げた。



「灯世が考えそうなことはわかる。
私を置いていくなんて許さない。」


「…はい。」



灯世はうな垂れた。



お見通しだぞと言わんばかりに灯世を睨み、追い討ちをかける。



「約束します、ちゃんと生きていきますから。
芦多様が帰ってきてなかったらわかりませんでしたけど。」



灯世はふふっと笑うが、芦多は笑えない。



もし、自分が帰るのがあと少し遅かったら…。



考えただけでぞっとする。



と、足音が聞こえてきた。



ハッと芦多は顔を上げる。



耳が研ぎ澄まされた。



「…どうやらいのではないな。」


「辰之助様でしょうか?」


「そうらしい。」



そう言うや否や、芦多はスッと立ち上がった。



ハッと灯世が気付いたときには、芦多の姿はなかった。



「灯世。」



すぐに辰之助が現れる。



「はい。」


「探したぞ。」