***
「予想外の展開だな。」
「ああ。」
政隆は灯世が完全に見えなくなってから言った。
「まさか、灯世殿がいるときに…。」
「…辰清がいらないことを忘れてくれるといいんだけどなぁ。」
「大きくなったとき、困るからな。」
型だと言ったら、灯世はどうするんだろう。
自分の息子の影武者だと知ったら?
将来、自分の息子の身代わりにするために、無理矢理連れてきたと言ったら?
怒るんだろうなぁ。
はぁ、と千歳は空を仰ぐ。
向かいでは政隆も同じようにしている。
「俺達が型だって知ったら、芦多が型だって知ったら灯世はどうすると思う?」
少し、間を置いて政隆は答えた。
「怒り狂われるだろうな。」
「だな。」
辰之助の首を絞めかねない。
「知らぬが仏とはよく言ったものだ。」
「本当にな。」
「ほれ、構えろ。
稽古をつけろと言ってきたのはお前だろうが。」
「はいはい。」
今構えますよ、と千歳は舌を出した。