少ししてから、灯世と辰清は辰之助に連れられて里のところ挨拶に行った。
辰清は正座が辛いのか、もぞもぞとしている。
「我慢なさい。」
灯世に励まされ、辰清は懸命に姿勢を保った。
「へぇ、可愛い顔をしているではないか。」
辰之助は里に抱かれた赤ん坊を覗き込んだ。
「やはり、生まれたては猿だがな。」
はははっと笑って、辰之助は赤ん坊の頬をつつく。
「まぁ、あんなに猿だったうちの辰清もここまで成長したんだから、里の子もどんなになるか楽しみだな。」
「里さんに似て、綺麗な黒髪でしょうかね。」
灯世は里の黒髪に目をやる。
今も艶々だ。
「私は、夫に似て目が切れ長な子になって欲しいです。」
灯世を睨むように見て、里は言った。
まだ、確執はとけていない。
「わたしは、元気な子になってほしいな。
一緒に遊ぶんだ。」
無邪気に、辰清が口を挟む。
「わたしはお兄さんだからな、一緒に遊んでやるんだ。」
むん、と胸を張り、辰清は両親に訴えた。
「それはありがたい。
この子は幸せだ。」
里の夫は柔和な顔を緩めて言った。