里は少し前に、同じ貴族の男性と結婚した。



残念ながら、辰之助は二人目の妻を娶ることを拒んだのだ。



灯世がいくら気にしないと進言しても、聞く耳を持ってはくれなかった。



「男の子?
女の子?」


「残念ながら、女の子だとか。」


「あら、いいじゃないですか。
きっと、可愛いんでしょうね。」



嘘ではない。



灯世も実は女が欲しかった。



現実問題、必要だったのは男だったので、辰清が生まれてよかったが。



「灯世様はそう思っても、周りが…。
相手方の母親が機嫌を損ねているようで。」


「きっと、肩身が狭いでしょうね。」



気の毒に。



長男さえ産めば、あと何人女ができても何も言われないのに。



「ご挨拶はもう少ししてからのほうがいいかしら。」


「そうですね。
落ち着かれてから。」



母親達の会話など耳に入らず、辰清は無邪気に団子をアリ塚に詰めていた。