「あ、いや、その…。」



もごもごと何か言う千歳の手をとる。



「いいですよ?
ただ、いきなりどうしたのかなと思って。」


「あ~、まぁ、な、な。」



意味不明に同じことをくり返す千歳。



そんなに緊張しなくてもいいのに。



手を放すと、千歳はゆっくりと灯世の腹に手を置いた。



「かたい…。」


「やわらかいと思っていましたか?」


「うん。
なんか、指で刺したらふごむかと…。」



こん中に赤ん坊が入ってんだもんなぁ、と千歳は不思議そうに撫でる。



「少し前までは動いたんですけどね…。」


「動くのか!?」



目を剥く千歳はやはり男なんだと実感して笑いが込み上げてくる。



「はい、知りませんでしたか?
ポコッて蹴るんですよ。」


「へぇ…。
……俺もこんなんだったのかぁ。」


「はい、きっと千歳さんはよく動く男の子だったんでしょうね。」



かもな、と千歳は歯を出して笑った。



「母さん、大変だったかな?」



千歳の目が細められた。



寂しそうに、呟く。



…千歳さんも、耶粗さんも。



みんな、本当は母親という存在が恋しくてたまらないんじゃないんだろうか。