紅葉の季節が過ぎ去ろうとしていた。
部屋から見えるほとんどの木が、葉を落としていた。
綺麗に見えるのは、紅葉くらいだ。
「灯世、身体が冷えるぞ。」
辰之助が心配そうに灯世を呼ぶ。
「大丈夫ですよ。
まだそんなに寒くありません。」
そうか、と辰之助は言ったが、心配そうに灯世を見るのは変わらない。
灯世は大きくなったおなかに手を置いた。
もう、そろそろ。
12月に入れば用心しなくてはならない。
まだそれまであると言っているのに、辰之助は灯世のそばを離れなかった。
「仲睦まじい」などと、前向きな意見もあるが、灯世としては少し息苦しい。
そのせいで千歳達に会えていないのだから、鬱陶しいったらない。
「辰之助様。」
「なんだ?」
きょとんとした目が、灯世に向けられる。
「お勉強はよろしいのですか?」
「…灯世まで父上と同じようなことを言う。」
辰之助はしかめっ面をして見せる。
灯世はくすりと笑って、辰之助のそばに寄った。