「灯世殿を困らせるな。」


「困ってねぇよ、なあ?」


「そう同意を求めるなと言っとるんだ。」



ぎゃあぎゃあと言い争いになってきた。



なんだか、千歳は誰とでもこんな感じのような気がする。



灯世の視線に気がついた政隆はコホンと空咳をする。



千歳はそれを見て、ケッと声にならない声を出した。



「灯世殿はそろそろ戻られたほうがいいんじゃ?」


「あ、え、はい。
そうですよね。」



しゅんとなった灯世の肩を叩き、政隆は言った。



「またいつでも来てくだされ。
わしらも退屈しております。」


「はい。」



優しい。



暇なわけがないのに。



さり気なく気遣ってくれる政隆が好きだ。



「灯世、行くぞ。」



千歳に言われ、灯世はお辞儀して立ち上がった。



「さようなら。」



さようならほど嫌いな言葉なないかもしれない。