「うあああ!」



突然の千歳の悲鳴に何事かと視線を巡らす。



千歳は地面に倒れ、そこに政隆が槍を突き付けていた。



「くっそおぉ!」


「なっとらんぞ、馬鹿者!」



ふんっと政隆は鼻を鳴らし、槍を引いた。



千歳は悔しそうに政隆を見上げる。



「だからさぁ、お前が強いんだって言ってんじゃんかいつもよぉ。」


「誰に向かってお前と言っているんだ?」



睨まれ、千歳はもごもごと何か呟いた。



千歳の口も、政隆にかかると形なしだ。



クスクスと笑う灯世に、千歳は叫んだ。



「あ~、何笑ってんだよ!
ひっでーな。」



せっかく起き上がったのねまたぱたりと地面に倒れ伏す。



「灯世殿、こんなバカは放っておいてくだされ。」



汗を拭いながら、政隆は灯世のいる影まで歩いてきた。



「あっつー。」


「まだ春だぞ、政隆。
とうとう歳か。」



そうからかう千歳も、汗が滝のように流れている。



政隆は呆れたようにため息をついた。



まったく、とでも言いたげだ。