「えぇ、喜んでくださいました。」



不自然に間が空いたが、房姫は辛抱強く待った。



「お体は?
大丈夫?」


「はい、歩けますし。」



だいぶ気分も落ち着いた。



房姫はそう、と笑って、稽古場の千歳に視線を移した。



「あの方はお友達?」


「はい。
仲良くして頂いています。」


「あまり親密になると辰之助様がやきもちを妬かれるわよ。」



ふふふっと、上品に房姫は笑う。



灯世も笑った。



確かに、あの人は嫉妬深そう。



「さて、わたくしは行きます。
侍女に見つかったら叱られますからね。」


「さようなら。」



頭を下げると、房姫は微笑んだ。



「可愛い従妹が出来て嬉しいわ。」



なんと返そうか迷っているうちに、房姫は歩いていってしまった。



あぁ、まずかった。



姫にあんな失礼な態度をとったと知れたら…。



辰之助様に怒られそう。



…なんだか、印象よりもずっと話しやすそう。



灯世は安堵し、息をついた。



初見が悪かっただけね。