…こんなことを言ったら芦多に半殺しだが。



千歳は部屋の中を見回した。



「広いなぁ。」



思わず、声に出た。



千歳の部屋は、この部屋の10分の1だ。



「二人で住んでますし。
若殿の寝室ですしね。」


「ったく、その金はどっから出てくんだっつの。」


「…すみません。」



萎れた灯世に焦る。



「いやいや、謝んなって。
…なぁ、外に出ないか?」


「え?」


「しばらく外に出てないんだろ?
あんまり暗いところに引きこもってると身体にカビが生えちまうぞ。」



ほら、と促すと、灯世は笑って頷いた。



「はい。」



何か羽織るもの、と灯世は辺りを物色する。



朱色の羽織りを見つけると、それを羽織って灯世は立ち上がった。



「よし。」



気候もだいぶ良くなってきたから、連れ出しても問題はないだろう。



「久々にいいもの見せてやる。」



何ですか?と訊く灯世に内緒だと言って、千歳は政隆のいる稽古場を目指した。