「それはショックだよなぁ。」



ポツリと、千歳が言う。



「灯世、心配すんな。
俺はお前を嫌いになんかならないよ。」



灯世がギュッと千歳の手を握った。



「勿論、芦多もな。」



うわあ、と灯世が子どものような大声を上げて泣き出した。



千歳まで涙が出そうになる。



どんだけ不安だったんだろう。



どんだけ、絶望したんだろう。



男の千歳には推し量ることのできない、苦しみがあったに違いない。



ひとしきり泣いた後、灯世は冷静に千歳に問うた。



「政隆様や、爪鷹さん達の耳にはもう届いてますか?」


「…多分な。
政隆はどうかわからないけど、爪鷹と耶粗は確実だ。
俺と同じくらいに届いたはずだから。」


「そう、ですか。」



赤い目が痛々しい。



千歳は思わず目をそらした。



「…芦多様に、知らせがいくと思いますか?」


「いや、誰も知らせないんじゃないか?
辰之助なら嫌がらせで知らせるかもしれないけど。」



灯世は顔を伏せた。



「でも、あいつ以外で芦多に嫌がらせなんかする奴思いつかないからな。
大丈夫だろ。
使いを送ったところで、届くかわからないからな。」



言ってからしまったと頭を抱える。



芦多の身の危険と連想させるようなことと何も今言わなくても…。