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千歳は、灯世の部屋に行こうか行くまいか迷っていた。
灯世は落ち込んでいるに決まっている。
しかし、会えるとは限らない。
下手に辰之助の耳に入りでもしたら、灯世に首輪がつけられかねない。
うーん、どうしたもんかなぁ。
地理の勉強中、千歳はガリガリと頭を掻いた。
と、そこへ師の鉄拳が飛ぶ。
「いってえぇぇ!」
頭を抱え込む千歳に、容赦なく彼は言い放った。
「貴様が集中を乱すからだ、馬鹿者めが。」
千歳は何も言わず、睨み返す。
こいつとは昔から気が合わないどころか犬猿の仲だ。
・・・おっと、今はこんな奴にかまってなんかいられない。
どうしよっかなぁ。
行っちゃおうかなぁ。
うん、行こう。
途端、千歳の顔は、晴れ晴れとした。