「灯世様?」



心配そうな侍女の声を無視して、灯世は布団に潜った。



「失礼します。」


「来ないで!」



自分でも驚くくらい、険のある声が飛び出す。



しばらく侍女達はこそこそと何か話し合っていたが、部屋から立ち去った。



もう、イヤだ。



どうして私はこんなことをしているんだろう。



きっと、私の妊娠の話は今日中に屋敷中、明日にはもう外に漏れ出すだろう。



・・・いつか、芦多様の耳にも入るのかしら。



それを考えると、怖くて身体が震えた。



その前に、千歳さん達に知られる!



どう思われるだろう。



芦多様の子ではない子を身篭ったと知られたら。



きっと、軽蔑されるに違いない。



今まで通りにはいかないかもしれない。



嗚咽がこみ上げてくる。



どうして、どうして、こんなことに・・・?



私はただ、守護者としてこの屋敷に召されたはずだったのに。










夜、辰之助はこの部屋に戻って来なかった。