「何もなかったか?」


「え?」


「何もなかったかと訊いている。」


「もちろんです。」



辰之助はじっと灯世を睨むように見つめ、何も言わずに布団に入った。



残された灯世はぽかんと一人座っていた。



何を言いたかったんだろう。



あの人はなにがしたいんだろう。



自分はこのままずっと辰之助と一緒に暮らすんだろうか。



お願い、芦多様、早く迎えにきてください。