夜、布団に入る前に、辰之助が灯世を呼びとめた。
「どうかしましたか?」
怪訝に思って辰之助を窺うと、彼は少し怒った目を灯世に向けた。
「昼間のこと、どうして私になにも言わないんだ?」
「…え?」
「魔物に襲われたこと。」
灯世は一瞬面食らったが、座りなおして言った。
「私が襲われたわけではありませんし。
耶粗様に手伝って頂いて、追い返せましたので。
報告はいっていると思いましたし、わざわざ私から申し上げることではないかと…。」
「そういう問題ではない!」
いきなり叫ばれ、灯世はびくりと身をすくませた。
「お前の身に起こったことすべてを報告すべきではないのか!?」
すべて?
「私達は夫婦だろう、すべてを話し合ってもいいだろう。」
「…はぁ。」
いきなり何を言い出すかと思えば。
灯世は辰之助の意図がわからず、ただ見返した。
「耶粗と話したのか?」
「え…。」
「答えろ!」
またもや、灯世は身をすくませた。
「話しました。」
まさか、芦多と同じように、接触を禁止されるのか?