20歳とは思えぬ幼さを漂わせる辰之助。



この人を、護りたいと思った。



何故だろう。



今夜ほどこの人が近く感じた事はなく、また愛しく感じた事もなかった。



「灯世、わしの海老もやる。
存分に食え。」



にこやかに、辰之助は灯世の椀に海老を置いた。



「ありがとうございます。」



ありがたく頂いておく。



海老を口に運ぼうとしたその時、背筋にゾクッと悪寒が走った。



隣の八重をチラリとみる。



何事もないように山城と話していた。



私の勘違いかしら。



息をつき、再び口を開けたその時。



先ほどとは比べものにならないくらいの波が灯世を襲った。



息を飲んで、肩を抱く。



茶碗と箸を取り落とした灯世に、辰之助は心配そうに近寄った。



「どうした灯世!」



まるで蛇に身体を這いずられているようだ。



嫌だ!



嫌だ嫌だ嫌だ!



怖い!



今まで感じた事のないものが灯世を襲う。



灯世はただただ震えて歯を鳴らすだけだった。



と、娘の異変に気付いた八重が顔をしかめてやって来た。



「どうしたの、灯世。
こんな席でうずくまるものではありません。
気分が悪いのなら席を外しなさい。」


「違う…違うの。
母様、何かくる。
何かおかしいの。」



八重は不思議そうに首を傾げた。