それでも、灯世達を裂いたのにかわりはないが。



……今頃、芦多様はどうしているんだろう。



灯世は手をぎゅっと握りしめる。



無事だろうか?



疫病にかかってはいないだろうか?



芦多に関する情報は何も聞かされていない。



灯世には芦多の安否を知る手立てが何もなかった。



千歳様は、知っているのかしら。



政隆様は?



きっと、彼らも心配で堪らないだろう。



そういえば、最近政隆に会っていない灯世だった。



今晩にでも、訪ねてみようと決めた。



長い長い拷問が終わり、やっと灯世は解放された。



誰よりも早く、部屋を抜け出す。



回廊に出たとき、カンカンと警報が響き渡った。



「何事!?」



後に続いて出てきた女達は不安そうに辺りを見渡す。



灯世も一緒になって、見張り台の方を見た。



見張りが仲間に叫ぶ。



「灯世様を呼べ!」 



ハッと皆が灯世を見つめる。



自分が呼ばれる意味はわかった。



…魔物だ。 



「灯世様!」



目ざとく灯世を見つけた一人の衛兵が、遠くから呼ばわる。



「今、行きます。」



灯世は着物の裾を摘んで走り出した。



下品だと言われても知ったことか。



緊急事態だ。