翌朝、芦多は見知らぬ天井を見上げて、今自分がどこにいるか思い出した。
呻いて、顔を覆う。
昨日、着いたばかりで魔物の襲撃をみてしまった。
幸先のよくない…。
ため息が出てくる。
どうやら予想以上にここでの生活は大変そうだ。
そして何よりも、灯世と同じ敷地内にいないということが実感させられる。
偶然に灯世と会うことももうないのだ。
まだ一晩しか経っていないのに、芦多は既に憔悴していた。
「芦多様、朝食の準備が出来ました。」
「…ああ。」
大きく息を吸い込んで起き上がる。
しかし、ここでは自分は救世主なのだ。
しっかり村の衆の為に働かなくてはいけない。
早くこの村に平和が訪れれば、それだけ早く帰ることが出来る。
…そう信じたかった。
そして、芦多の下邑での長い暮らしは始まった。