「この夏、魔物が現れてから、もう6人が殺されました。」


「それはもう惨いもので…。」



よねが口元を覆う。



「動けない年寄りや、子どもばかり狙われて。
もう、村の連中は怖がって一人で外を歩きたがらんのですよ。」



そうだろう。



母親達もさぞかし気が張り詰めていることだろう。



と、外から悲鳴が聞こえた。



「なんだ!?」



与作が腰を浮かせる。



芦多は荷物と共に置いてあった太刀を引っ掴み、外に飛び出した。



バンと戸を力任せに滑らせ、太刀を抜く。



与作の家から少し離れたところで、女二人が倒れていた。



その上では……魔物が飛びまわっている。



キィキィと耳障りな音は聞き覚えがある。



芦多はすぐさま走り出した。



「伏せていろ!」



突然の介入者に、娘達は驚いたように顔を上げた。



「伏せろ!」



もう一度怒鳴ると、二人は慌てて地面に突っ伏した。



それを確認すると、芦多は太刀を横に薙ぐ。



不意打ちを食らった魔物は声もなく真っ二つに切り裂かれた。



「もういいぞ。」



芦多が声をかけると、怖々と二人は顔を上げる。



「今度魔物と遭遇したときは声を立てずに草むらにでも入って身を隠せ。」



芦多よりも少し若いであろう娘二人は呆気にとられた様子で、芦多に見入っている。