横目で中を覗くと、そこには人がいた。



この廊下よりも薄暗く、行灯(アンドン)の光が揺らめく部屋の中に。



何をするでもなく、壁にもたれてぼんやりとしている男の子。



その横顔は、何ともいえない表情だった。



食い入るように見つめていると、男の子が灯世の方を見た。



はっきりと目が合う。



灯世は呪札で動きを止められたかのように固まっていた。



と、男の子がゆっくりと目を見開いた。



口が何かを言ったように動く。



もう一度、はっきりと動いた。



どうして?



そう動いたように見えた。



自分がどうしてここにいるのかを問われたように思い、灯世は慌てて膝を折って頭を下げた。



「大守護者八重の娘、辰之助様に仕える灯世と申します。」



我ながら噛まずによく言えたものだと思う。



いつまで経っても返事が返ってこないので、灯世はゆっくりと頭を上げた。



男の子が身を乗り出してこちらを見ていた。



私、何かおかしい事を言ったのかしら?



不安が表情を曇らせ、後退りさせる。