「芦多様、私の部屋に来ませんか?」


「え?」



驚いたように芦多は灯世を振り返った。



「火を焚きますので、お茶でも。」



しばらく考えた後、芦多は小さく頷いた。



「でも、いいのか?
見つかったら…。」


「…嫌ですか?」


「…いや。」



案内してくれ、と芦多は顔を背ける。



男女が夫婦でもない限り、互いの部屋を行き来するのは、極めて稀だ。



奥様方の格好の標的になる。



それでも灯世は、芦多を誘った。



「ここです。」



障子を開け、中に招き入れる。



芦多の部屋よりも少し広めのその部屋は、整理されていていかにも女の子といった感じの部屋だった。



芦多が入るのを躊躇っているうちに、灯世はさっさと火を用意する。



しばらくすると、小さな鉢の中で火が赤々と燃え始めた。



芦多はそろそろと中に入る。



女の部屋に足を踏み入れたのは初めてだった。



「綺麗な部屋だな。」


「ありがとうございます。
掃除もしていただいてますしね。」