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あの日以来、灯世は皆の玩具だった。
高価な着物を着せられて、
「まぁ、可愛いこと。」と誉めそやされたり。
茶会に引っ張りだこになって茶を飲まされては、
「まぁ、上品な娘さんだわ。」と微笑まれたり。
皆が一斉に灯世と仲良くし始めたのである。
たくさんの人間に群がられて、体力が続かない。
今まで挨拶も交わしたことのない婦人から、「あたくしの娘にしたいわ。」と言われたりもした。
魔物を退けたことは一気に屋敷どころか地域一帯に広がり、灯世はちょっとした有名人になった。
おかげで、何もしていないのに人から逃げ回る羽目になったのである。
今も、女人達から逃げ出してきたところだ。
雪の降る庭を眺めながら、灯世は小さく身震いした。
寒い。
年の終わりも近づくと、身を刺すような寒さが襲う。
もう、吹き付ける風で頬の感覚がない。
それでも灯世は縁側に座り込んだ。
雪が、空から降ってくる。
庭の石や木々が、白化粧されていた。