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「今考えたら、女の子一人残して来たのはちょっとあれだな。」



芦多の布団に寝転がりながら、耶粗は言った。



「なら、お前が一緒に残ってきたらよかっただろう。」



何故か部屋を占拠された芦多(「お前の部屋しか見せられる状態じゃないんだよ」云々)は不機嫌に耶粗を睨む。



「やだよ。
灯世には悪いけど俺、侍女が嫌いなんだ。」


「お前、女好きに見えるのにな。」



千歳の言葉に、耶粗は起き上がって説明した。



「誤解しないでくれよ。
俺は女は好きだ。」


「ほら。」



俺、当たってんじゃん。と千歳は得意気だ。 



「ただし。」



なぁ、と他の二人に同意を求める千歳を制し、耶粗は続ける。



「可愛くておしとやかな娘限定だ。」



語尾に何かがつきそうな甘い声で、耶粗は括る。



芦多は呆れてため息をついた。



「じゃあ、お前は侍女は可愛くないと言いたいのか?」


「いや、品がないと言ってるんだ。」


「灯世に謝れ!」



千歳が耶粗に飛び掛かる。



芦多は身体を倒して飛び去る千歳を避けた。



「こんにゃろう!」



取っ組み合いが始まる。



爪鷹も取り合わず、芦多の文机に置いてあった書物をめくった。