「私、厨房に行って来ます。
何かあるはずですから。」


「え、いいよ。」



爪鷹が手を振るが、灯世は譲らなかった。



「遠慮しないでください。
何か持って皆さんの部屋に届けますから。」



その時、千歳の腹が鳴った。



「えへ。」



ぺろりと舌を出して誤魔化すも、誰にも触れられなかった。



悲しそうに千歳は唇を尖らせた。



「じゃあ、先に戻っててください。」


「じゃあ、お言葉に甘えて。」



皆口々に礼を言い、暗い廊下を戻って行った。



見送ったあと、灯世は一人厨房に向かった。



誰かいるだろうか?



にしても、この人の捌け具合は異常だ。



早々に寝床に引っ込んだのか?



このまま誰にも見咎められずに芦多達の部屋に行き付けたら御の字だ。



灯世は早足に廊下を進んだ。