「くっそー、俺、まだ酒のんでなかったのになぁ。」


「耶粗め、俺なんか料理も少ししか口にしていないんだ。」



灯世はクスッと笑った。



だって…



「芦多様は料理を口に運ぼうとした瞬間に私に倒れかかられたので、何も…。」


「食ってないのか!?」



千歳の問いに、芦多は無言で頷いた。



「あらあら、まあまあ。」



爪鷹が苦笑する。



「仕方ない、残った食べ物全部芦多にやるよ。」


「すまんな。」



が、広間に着いた途端、芦多の笑顔は凍り付いた。



「誰もいない…?」



机は片付けられ、侍女すらいなかった。



ただ、行灯が灯っているだけで、キレイさっぱり何もない。



「やられた。」



千歳が額をベチンと叩いて、悔しそうに言う。