「はぁ…。」



と言われても。



「ね、灯世、さっきのどうやったの?」


「わかりません。
なんか、自分では結界を作ったつもりだったんですけど…。」



確か、灯世はまだ魔物を消滅させる術をまだ習得していないはずだ。



「火事場の馬鹿力、ってやつか?」


「おそらく…。」


「すっげー、灯世、かっけー!」



耶粗は手足をじたばたさせた。



「辰太郎様が灯世は役に立たないとか言ってたからちょっと心配だったんだけどさ。」


「おいッ!」



芦多が顔を強張らせて耶粗に詰め寄る。



「いーじゃん、実際は力あるんだから。
俺は褒めてんの。」


「いいですよ。
私、ここでよく思われてないの、わかってますから。」



この屋敷に来た当初より、確かに扱いも変わったし、人々の目も変わった。



最近は貴族の姫君達と出くわすと、露骨に避けられるまでになっていたのだ。



「そうか…。」



芦多はそれしかかける言葉が見つからなかったらしく、ぽつりと言って下がった。



「さ、中入ろ。
俺、まだ腹減ってんるだよねぇ。」



行こうか、と爪鷹が灯世を促す。



「芦多、いいよな?
しばらくはあいつら来ないよな?」


「おそらくな。
灯世、もし奴らが近づいたら感知出来るのか?」


「はい。
特別な術を使われてなければ。」



ならいいだろうと、みんなぞろぞろと屋敷の中に戻った。