「芦多様もどうぞ。」



主役が食べる前に料理がなくなってしまいそうな勢いだ。



急がなくては芦多に残り物を食べさせることになる。



「じゃあ。」



言って芦多は手近な席に座った。



「あの…。」



何と突っ込んでよいやら。



灯世は恐る恐る切り出した。



「上座にお座りになっては?」


「いや、ここでいい。」



困った顔になって芦多は言って。



むん、と眉間に寄せた。



もしかして…。



「芦多様はこういうのが苦手なんですか?」



無言で頷く。



「悪かったな。」



クスクスと笑う灯世に噛み付くように、芦多は歯を剥いた。



赤くなった顔がいつもより幼く見える。



「ゴメンなさい。
でも、意外で。」



立ったままの灯世の着物の裾を遠慮がちに引き、芦多は言った。



「悪いが、早めに抜けさせてもらう。」



言っている間にもキョロキョロと辺りに視線を走らせている。



「わかりました。
フォローしてみます。」



頼む、と言って、芦多は料理に手を伸ばした。



突如、灯世の視界が歪んだ。



「あ…ッ。」



この前と…同じ感覚! 



ぐらりと灯世の身体が傾いだ。



「灯世!」



泡を食った芦多が灯世を抱き止める。



「灯世、灯世!?」



灯世は芦多の着物を掴んだ。