「着いて早々申し訳ないが、我が屋敷の祠(ホコラ)にも祈祷をしてはくれぬか。」


「喜んで。」



八重は答えると、一層頭を下げ、スッと立ち上がった。



灯世も後に続く。



広間を出ると、八重は灯世を振り返った。



「灯世、山城様の屋敷の祠にあなたが手を合わせるのはまだ早い。
外で待っていなさい。」


「…はい。」



内心、子供扱いをされてムッとしたが、俯いて頷いた。



駄々をこねるのも、また子供扱いをされる原因になると思ったからだ。



廊下を進むにつれてどんどん人通りが少なくなり、薄暗くなってゆく。



ここら一帯はごく一部の人間しか立ち入りを許されていないのだ。



八重は余程慣れているのか、少しも速度を緩めることなく進んでいく。



灯世には同じ廊下を辿っているようにしか見えず、さっぱりわからなかった。



ふと、八重が足を止めた。



「灯世。」



そして、振り向きもせず、灯世を呼んだ。



「はい?」



不思議に思い、首を傾げる。