「何!?間に合うか?どこだ!」


透は沙綺に向かって叫ぶと走り出そうとした。
しかし、透は即座に沙綺に制止された。


「待て!!もう結界抜けちまった奴は追えねぇよ。それに深追いはよした方がいい。」

「何故だ?!すぐ近くにいるなら追いつけるはずだろ?!」

透は沙綺が早々と諦めていることに憤りを感じた。


「夜はどうしたって妖の力が増す時間…俺等には視界も悪く不利だ。
しかもこの強化された符術結界をあっさり抜けるなんて並みの妖に出来ることじゃねぇ…。」

厳しい顔をしたまま沙綺は首を横に振った。



「クッ……!」

透は沙綺が言いたい事が分かり、余計に歯がゆかった。
確かにこのまま追って行っても、相手が鵺クラスならかなりの危険行為に違いない。

透は握りしめた手の力を抜くと、一つ深呼吸をして心を落ち着けた……。


「ふぅ、分かったよ。
それにしても変だな?
…何だってこんな場所に妖が出るんだ?お前もそう思わないか?」


肩の力を抜いて、透は沙綺に問いかけた。
その瞳はすでに元の色へ戻っていた。