透は目を閉じて爺様との会話の意味を考えようとしていた…。

その時である。透の鼻がピクリと動いた。

「香水?男物だな。場所はビルに入った所か…。
ここには誰も来ないはず。来るなら…奴らか。」

透はそうつぶやくと、ゆっくりと目を開いた。
その目はすでに、先程までの人の目とは違った物に変化していた。

金色の目…瞳は縦長に変わり、それはまるで狐のように妖しく光っている。

透は耳に意識を集中させていた。

「三人か…。会話は無いが、真っ直ぐ向かって来ている。間違いなさそうだな。」

普通の人には音も、匂いも分かるはずがない距離であっても、透には同じ部屋にいるかのごとく理解することが出来た。

それも父親から譲り受けた力の一端であるからだ。

そんな透にはドアの前で歩みを止めた男達の動きが掴めていた。


そしてゆっくりとドアが開いた…。