ザッ……ザザッ…ガサッ

先程透達を観察していた女は、木の枝づたいに飛びながら移動していた。


目的地は結界の境界線。
今張られている強化結界の外へ出るのが目的だった。


「ここら辺が境目のようね?
坊やにしては良くできてる方だと思うけど…。」

女は木の上から飛び降りると、真っ直ぐ結界の境まで歩きだした。


「…符術結界術のようね。」

境目にたどり着いた女は、辺りを見回してつぶやいた。


「これなら大抵の妖は、手こずって出られないかもしれないわね…。クスッ」

女は一瞬困ったわね…といった表情をしたが、次の瞬間には楽しそうに微笑んでいた。
女はゆっくりと結界に向かって手を伸ばした…。

バチバチ!バチチチ!

手をふれた結界が、電気のスパークのように通り抜けようとする手を阻止した!

女は一瞬驚いた顔で手を引いたが、もう一度手を伸ばすとスパークを無視して結界の外へと体を進めた。


「フフフ…坊や達……私を止める気なら、この結界では少し役不足よ?
退魔結界士くらいの腕になるまで頑張るのね…。」


結界の抵抗に打ち勝って外に出た女は、その後、夜の闇へと姿を消していった…。