昼間ならばそれほど嫌な印象はないだろう。
だが、妖が居ると分かっている森はどうにも不気味で仕方ない‥。

その反面、遠野で暮らしてきた透には、コンクリートの街よりも落ち着ける場所でもあった。

透は息を殺して沙綺に続いた。
しばらく歩くと沙綺の足が止まり、小さな声でささやいてきた。


「ここら辺のはずなんだが、姿が見えん。
神楽……お前分かるか?」

うっすらと額に汗をかき始めた沙綺を見て透は能力を使った。
瞳の色が金色に輝くと妖の匂いを探した…。


「…!?危ない沙綺!下だ!」

周囲の状況を瞬時に把握すると、透は沙綺を抱えて横に飛んだ!
その直後、下から錆びた日本刀が突き出してきた!


「神楽!お前なんて力してやがんだ!?普通、男抱えて飛ぶなんて出来るもんじゃねぇぞ!」

「説明は後だ!」

沙綺が驚いている声を無視して透は地面を見つめた。

地面が何カ所か盛り上がると、白骨化した鎧武者が手をついて出てきた!
顔を斜めに傾けて顎をカタカタと動かしている。


「ちっ!骸武者五体か!手分けしていくぞ神楽!」

沙綺は呪符を取り出すと印を切った!
呪符が青白い光を帯びている。

透も意識を集中して身構えた。