沙綺はどこかに買い物でも行っていたのか、ビニール袋を左手に持っていた。

 格好はラフで、タンクトップのシャツに七分丈のズボン、サンダルを履いて歩いている。
そして口にはアイスをくわえていた。

 そしてアイスをかじりながら沙綺は透の方へ歩いてきた。

「一本電話くれたら迎えに行ったのによー?
この時間帯は危ないから早めに帰ろうぜ。」

透は知り合いに会えた安堵感で、どっと疲れが出たが、もう少しで着くと考えると足取りは少し軽くなった気がした。
それにしても沙綺の発言に何か引っかかる物がある。

「ああ、助かった。迷子になるところだったよ。
それにしても…この時間帯が危ないってのはどういう事だ?」

その問いに対して、沙綺はアイスをかじりながら答えた。

「今の時間帯は昔から逢魔が時って言われてて、妖が良く出る時間帯なんだよ…。
あんたが化け猫に襲われそうになったのも、これくらいじゃなかったか?」

「どうだったかな?もう少し暗かった気もするが…。」

「そうか?まぁ実際の話、この辺りではこの時間帯に事故や行方不明者が良く出るんだ…。
だから住民達はあまり出歩かない。
俺は、妖がいると睨んでいるんだけどな。」