透は地図を頼りに沙綺の住むマンションを探していた。


白蓮の屋敷からはそれほど離れてはいない。
といっても、それは車などの交通手段があっての話。
歩きの透にとっては道が分からないのもあって非常に疲れる距離だった。


「こんなに遠いなら迎えの電話をしとくべきだったな…。」

透は自販機で買ったジュースを開けながら独りで呟いた。


「地図からすると、大体この辺のはずだが？」

透は地図と街並みを見比べながら再び歩き始めた。
この辺りはそれほど街と言うほどでもなく、所々に緑の多い公園があったり、縁日には出店が並びそうな神社があったりと、日本の風情が楽しめそうな街並みだった。

しかし思ったほど人や車の数は少なく、暗くなるとライトがぽつぽつとしか無い道が、どうしても不安な感じを抱かせる…そんな所でもあった。


だんだん暗くなりつつある空に焦りを感じて、透は早く見つけようと歩く速度を上げた。

そして道路の角を曲がった時に見たことのある面影を発見した。


「よぉ！神楽じゃねーか。ぼちぼち来る頃だと思ったぜ！」

その声の主は沙綺だった。