それから数分後、屋敷にたどり着いた彩音達は真っ先に庭へと向かった。
白蓮の部屋への近道にもなるが、先程の火柱の真下なので何かあるかもしれないと考えたからだった。

庭へ駆け込んだ二人が目にしたのは、無傷で佇む白蓮と浴衣の様な着物を着た長髪の男の姿だった。
後ろで長い髪をまとめて縛っており、前髪は目が隠れるほどに伸びていた。
ヘアースタイルというよりも、伸びるがままに放っておいたという印象だった。

その男を見た瞬間、月読はギクッと何かを思い出したかのように彩音の後ろに隠れた。


「ん?どうしたのお姉ちゃん?しーちゃん担いでたら隠れきれないよ、あはは!」


思わず笑った彩音の声を聞いて、白蓮達がこちらに気が付いた。


「おお、彩音や…丁度貴女達の話をしてたんよ。妖の気配を感じて来てくれたんやろ?」

白蓮がにこやかに微笑んで彩音に話しかけた。
彩音は白蓮達に近づきながら答えた。


「御館様お怪我はありませんか?…実はそれだけじゃないんですが。」


「私は心配いらんが…それだけじゃない?何かあったのかえ?」


心配するように見つめる白蓮に向かって、彩音は涙を堪えきれずに語り始めた。