京都府鞍馬山…幼少時の源義経が、天狗に戦い方を教わったという一説すらある場所…。

その山中に翌日となった今日、透達は来ていた。

一般人が入る登山道ではなく、退魔士達のみが利用する獣道を進んでいった透達は、いつしかそびえ立つ岩壁の前にやって来ていた。


「なんだ?なにも特徴がない岩壁じゃないか。
まさかここをよじ登るんじゃないだろうな?」


透はそびえ立つ岩壁の上を見上げてゲッソリした。


「この先だよお兄ちゃん!」

彩音は珍しくスカートではなく、パンツスタイルでそう言った。

山登りなのでスカートじゃダメだと忍に言われた彩音は、沙綺の部屋から服を借りてきたらしい。

丈が全くあっていない沙綺の服の裾を折り返して、ぶかぶかなウエストはサスペンダーで引き上げてあった。
チビTシャツを着ていたので余計に上半身がスリムに見えて、胸に視線が行ってしまう透だった。


「この先って…。他に迂回できないのか?無理に登らなくても…。」


「誰が登るって言ったのよ、昨日説明したでしょ?これが視覚結界よ。」

そう言って忍は壁に向かって歩きだした。