「そぅ。坊やからは何か不思議なものを感じるわね?」

透は女の発言に、驚いた顔で聞き返した。

「どうしてそう思ったんですか」


女は透の慌てた様子にクスクスと笑いながら答えた。

「フフフ、どうしたの?そんなに慌てること無いじゃない。女の勘よ。」


「俺は…普通ですよ。」

「普通かしら?私には迷ってるように見えるわ。
そうね…自分の力を信じられないような感じにね?」


それを聞いた透は、見透かされた気分でドキッとした。
…実際、自分に憑いている妖の力を引き出せていない葛藤があったからだ。
しかし、この女性に言っても理解されることはないと考え、冷静な態度を貫いた。


「俺は迷ってなんか居ません。多分気のせいですよ。」


透の様子をにこやかに見ていた女は、ゆっくりと言った。

「それならいいけどね。
もし何かに迷うときは、ゆっくりと自分の心と会話してみるといいわ。
きっと何かの力になるから。」

透はその言葉を胸に刻むと、ほとんど沈んでしまった夕日を見つめて言った。

「そうですね…ありがとうございます。
…もう少しゆっくり話したかったですが、俺はそろそろ帰ります。
短い時間でしたが楽しかったです。」