グガァァァァアアアア



まるで罠にかかった虎が、怪我と不自由にイラついたような雄叫びが響き渡った。




その場所は、妖の住むと言われる土地…遠野。神楽の里があった龍脈の通る場所。


遙か遠い地まで、傷を負った鵺が回復するため、孤独に山中の洞窟に身を寄せていたのだ。


「許さぬ許さぬぞ退魔士」

鵺は怒りに満ちた形相で、全ての人間…中でも傷を負わせた退魔士を激しく憎んでいた。

御影に負わされた傷は深く、失った半身の再生すら満足に進まなかった。


「我等の大願のため、最早許すことなどできぬ。
神楽の末裔に宿る妖の利用など知ったことか
所詮は人間、我等の障害にしかならん」




その時である、外から羽ばたく羽音が聞こえて、鵺は警戒した。

バサッバサッ…バサッ…スタッ

降りたった影は、鵺のいる洞窟の奥へと足を踏み入れた。