一度村へと帰った沙綺達は、手短に荷物をまとめると、止めてあった車に乗り込んで白蓮の屋敷へと向かった。

田舎の村だからだろうか、運がいいことに車のキーは刺さったままで車庫に止まっていたのである。

暗い夜道を運転しながら沙綺が言った。


「なぁ、今回の件に疑問はないか?俺は少し引っかかることがあんだよ。」

その言葉にいち早く反応したのは彩音だった。

彩音は後部座席から、透と沙綺の座る運転席の間に顔を出して言った。


「彩音もなんか気になることあるよぉ?」


「…何だ彩音?」

透はひょっこり飛び出したツインテールの頭を眺めて聞いた。


「だって妖は霊力が高い人間が好きで食べちゃうんだよ?あの村にそんなに居るっておかしくない?」

沙綺は眉を寄せて険しい顔をしながら言った。


「確かにそれもあるな…でも俺が気になってる事は他にもある。
あの日、俺と神楽が取り逃がした妖は、今日より強力な結界からあっさり抜けやがったんだ。」


「つまり、今日倒した妖じゃなかったって事だな?」

透は沙綺の言いたいことを読んで続けた。

「ああ、じゃあソイツは俺たちが居なくなって手薄になった街のどこに向かうと思う?」