「そうですか…仕方ないですね。ゆっくり歩きましょう。」

男は面倒くさそうに言った。



(ヤッパリ当たりみたいね。
この落ち着き方といい、今までの会話の様子といい、とても殺されかけた場所に戻る人の反応じゃないわ。)

忍は振り返って彩音の様子を見た。
彩音はうまいこと演技をしながら伝えているようだ。
沙綺達の表情が険しくなっていくのが見えた。



忍は男に、ある質問をした。


「おじさまは村に来た時に、妖が避難地まで追ってきたと言われましたよね?」



「…………?」



「その妖の特徴を教えていただけませんか?」

忍の質問に男の余裕ある表情が消えた。


「…なにが言いたい?」


「これは私たちの見落とし…あの時の雰囲気に飲まれました。
よく考えたら貴方は一つミスをしましたね。
私たちには普通のことで気がつくのが遅れましたが…。」



そこで忍は大きく息を吸い込むと勢い良く言った。


「姿を現せ普通の人間に、妖を見る事はできない」

そう言い放った忍の顔を男は固まったまま見ていたが、次第に低い笑い声をあげだした。