そして、数時間後に透達は目的地となる村にやってきた。



日暮れにはまだ時間があり、ここの村人もすでに避難しているのか人気がない。
おそらく白蓮の手回しによる物だろう。

透は付近の様子を探るために能力を使った。



…とぎすまされた感覚が微かな妖気の痕跡を捉えた。


「どうだ神楽?何か感じるか?」


「ああ、しかし微かな痕跡だけで追える程じゃないな…。」

丁度この村は周囲を山に囲まれた水田の多い村であり、山の中まで含めるとかなりの広さになる。

とりあえず歩き回っても仕方がないので、沙綺は周囲に結界を張り、捜索の方針を決めることにした。



一時間ほどした後、沙綺は村の中心にあった一番大きな家の周囲に結界を張って帰ってきた。透達は屋敷の中だ。


「それにしたって静かだぜ…。不気味なくらい何もねぇ。」

沙綺はカラスの鳴き声しか聞こえない村に不安な感覚があるようだった。


「何ビビってんのよ情けない!」

忍は腕を組んだ姿勢で沙綺に言った。