あの時、もし君に会っていなかったら。

今のあたしたちは居なかったってことだよね?





「愛華、これ一緒にやってみない?」

親友の、梨紗にそう言われたのはつい2週間前くらいのことだったと思う。

「何?なんか面白いこと?」
「うん、面白そうなのみつけたんだよね。愛華ならかわいいからいけると思って」
「え?なにそれ?かわいい子限定なの?じゃあ、あたし無理じゃん」
「まあ、かわいい子限定なのはそうだけど……ほら、読者モデル。あたしと一緒に」

梨紗のもつチラシみたいなのには、


≪気軽にオッケー!!あなたもモデルになりませんか?読者モデル募集中!!≫


そんな言葉が派手なピンク色でポップにプリントされていた。

「んー、たしかにモデルってかっこいいけどあたし無理じゃない?梨紗は美人で背高いし」
「は~?何言ってんの。あんたも充分かわいいからっ」

確かに、モデルになりませんか?みたいにスカウトは受けたことある。 
でも、実際にやってみるとカメラの前ではなぜか笑顔がぎこちなくなってしまい断ったばっかりで実際には1回しかプロに撮ってもらったことはない。

「え~っ、でもさあ……」
「あー、もうつべこべ言わずに……よし!!再来週の土曜、六本木のビルに午後1時ね」
「え?!まだ、了解出してないしっ」
「大丈夫!!あたしもいるし!!」
「あー、もう。絶対断るっ」
「あ、一応行くってことね?」
「はいはいっ!!」


こんな何気ない高校生の会話がほんとに始まりだったりするんだってこと、あたしはまだ知らなかった。