「……笑ってるよ…」
「…嘘」
私は、手を伸ばし琉汰の肩…首…頬に両手添えた。
千冬の手が冷たかった……細くて長い指が、俺の顔に触れていた。
【……泣いてる】
琉汰の頬に、涙が流れ私の指に琉汰の涙がついた。
「…琉……汰…」
「……冬……」
俺の頬を触る、千冬の手を俺は、握った。
「…泣いてるじゃない……琉汰が泣いてたら……辛…い……泣かな…いで……今日は……私達の……最後の思いで作り……最後の……デート…でしょう…」
千冬は、無理に微笑み涙を流しながら言った。
「……千冬…」
「……んっ?…」
「………」
琉汰は、私の名前を呼んだ後、口を開かなかった。
俺は、千冬の眼を見ていた。
「……琉汰?…」
〔ボーーーッ!…〕
私の耳に汽笛の音が聴こえた………辺りが静かになると、琉汰の息遣いを感じた。
【…最後に琉汰の顔を眼で見えないのなら…耳で琉汰を感じよう……琉汰の匂い…琉汰の温もり…琉汰の手…琉汰の顔を私の手…で覚えて居よう…】
「千冬……」
「……何……」
「……もう一つ…お願いを…聞いてくれるか……」
「……お願い……なに?…」