モニカを抱えて控室へ入り、
鍵を落とす。


「一言も喋るなよ。」

モニカの耳元で、
小声で指示をだすと、
彼女は無言で頷く。

放心状態のコイツに、
今、自分が置かれた状況を
確認する気力はないようだ。


ともかく、ここに
長居は無用だった。


そのまま、
シャワールームに向かう。

「血を流すんだ。
こんな格好じゃ、流石に
ポリスも見逃してくれねぇ。」

ここは、主に、
返り血なんかを浴びた際、
痕跡を消すために
用意された設備で、
俺達やブローカーが
身繕いに利用している。


当然、盗聴器なんかも
普通に設置されている。


それが証拠に、
無線の周波数が乱れて、
ハウリングが起こっている。

集音器の方向に、
影響を受けているのだろう。

まあ、こんな所で、
罠にはまる方が、珍しい。

キムは、状況を察して、
回線を切ってくれたようで、
雑音からは、救われた。