壁際に続くそれは
徐々に短い間隔に
変わっていく。


錆びたゴミ箱に付着した
乾ききらぬ血糊

散乱したゴミが、
そこに、微かに見えている
足の主が接触したことを
示している。


ごみ箱の間の細い隙間に
挟まるように、
俯き座り込む人物に
視線を送る。


襟周りが大きいのか、
丸みのある左肩が
あらわになっている。

はきこまれた
ビンテージジーンズの裾が
折り返されており、
そこから素足が覗いている。


いた・・・


モニカだ・・・


・・・間違える訳などない。


着ているモノは、
俺の服なんだから。


「モニカ!動けるか?」

思わず、
一息つきそうな自分を堪え
すかせた窓から
彼女に声をかける。


バッと、俺の声に
顔をあげた彼女は、
こちらを見るなり、
その表情を歪め
泣き出しそうになる。


「早く乗れ!」

バックミラーをみながら
小声で強く指示すると
モニカは、震えながらも
数度、顔を縦に振って
後部座席に滑り込む。

身についた習慣とは
恐ろしい。


彼女は、
こんな状況であっても、
危機感知を
忘れていなかった。


一連の行動に感心する。