「随分、いい表情を
するじゃないか。」

サタンが近づき、
左頬に指を伸ばす。

「だがな。
ショーとしちゃ、失敗だ。
銃声と死体しか、
フィルムに残っていない。
俺の趣向に合わないのだよ。」

奴の左手の指間に、
医療用のメスが
しこまれているのを見つけ
咄嗟に身を離す。

「リディア。
どうやって、失敗を償う?」


自分が、身体をかわした事が、
気に入らないのか、
その瞳の色が、
キレたものに変化した。


思わず、後ずさる。


「リディア。
どうするか、
聞いているんだよ。」

涼しい声と裏腹に、
奴は、振り上げたメスを
顔面狙いで振り下ろす。

避けた刃先は、私の背後の
換えられたばかりの扉に
突き立てられていた。

「その衣装も気に入らない!」

思いの外、強い腕が、
私の身体を引き寄せ
壁に押し付けたまま
着替えたばかりの黒いシャツを
胸元から、一気に引き裂いた。

突然の奴のキレ方に驚き
言葉を無くす私を、
更なる戸惑いが襲う。