そして出てきた言葉は・・・。

「あたしさ、同じクラスのレイジくんに告られちゃってね。」

急に違う話をしだしたユリに。

不思議そうな顔で、私がユリの顔を見ると。

「ほら、さっきグランドで。」


そういえば、帰り道で聞きそびれたけど。

さっきグランドの片隅で、なにか話していたっけ・・・。


「正直、あたしの趣味じゃないなーって感じ。」

そう言って、ユリは微笑んだ。


そして。

「ねぇ、あたしと賭けをしない?」

唐突にユリは、私にそう言った。

「・・・賭け?」

私が首を傾げながら、そう言うと。

「うん。」

ユリはうなずいてから、続ける。

「もしあたしが、ナナの好きな相手から、中絶手術の同意書に、記入してもらってきたら、ナナは手術を受ける。もしもらってこれなかったら、その子は産む。」

ユリは見たこともないような真剣な眼差しで、私を見据えた。

「それって・・・。」

「そう、シュンくんからもし、相手役としての同意を得て、記入してもらった同意書をもらってこれたらって言うこと。」

私は精一杯、大きく首を振った。

「・・・そんなこと、シュンくんにこのことを知られたくない!」

ユリは冷静な声で。

「でも、どっちにしても、同意書は必要なのよ。それにシュンくんは、軽々しく誰にでも口外するような人じゃないと思う。」

「でも・・・。」

短い沈黙があった。


「決まりね。じゃあこの話は、今日はもうおしまい。せっかく泊まりに来てくれたんだから、今は一緒に、楽しい時間を過ごそ。」

私が肯定も否定もしないうちに。

ユリは勝手にそう、決めてしまった。


でも。

なぜだか私は、このユリの提案に。

この賭けに。

心のどこかで。

ホッとしたような気がする。