「世間は狭いってのはこのことだな」
正樹さんはスプーンでコーヒーをかき混ぜながら呟いた。
「はは…、ほんとですね」
まさか正樹さんがアンドロイドちゃんのお兄さんだったなんてね。
全然似てないじゃん。
正樹さんは社交的で、性格も明るく、誰からも信頼されてる。
機械みたいなアンドロイドちゃんとはまるで正反対だ。
似ている所と言えば、少し尖った鼻筋くらいではないだろうか。
「お前さぁ…まさか雪音に手だしたり…」
正樹さんの表情が一瞬曇った。
「やだなぁ。正樹さん、俺をなんだと思ってんすか」
俺は苦笑いでごまかした。
こえぇ。
こりゃ昴以上だな。
手出してないっていえば、嘘になるし…
「お前みたいに女グセ悪いやつそうはいないだろ~」
さっきの表情とはうってかわってさわやかな笑顔だ。
「そりゃどうも」
正樹さんの笑顔が一瞬アンドロイドちゃんに見えて、俺は軽く目をそらした。